君に残す歌を、

「よし、地球儀を買ってこよう」 「はい、はあ?」 しまった、口に出す内容ではなかったが、ちょっと彼女の不意を付けたのでまあ良しとしよう。不可抗力だから仕方ない仕方ない。――思い出していたのは昨日の“夢”だ、器用に組まれた手足に(若い者は長いね)…

「そういえば、基地内に部屋、用意出来ましたので移動許可お願いします」 「はい、っと、そうか早かったね、ありがとう」 「いえ。それにしても、セキュリティの問題があるとはいえ、なにも貴方自らが部屋を提供するまではしなくても良かったのではないかと…

その隊員には、子どものような印象がある。しかし実際には二十代前半。 かなりの飲み込みと腕の良さと、半端ない人手不足で正直特に問題視されたこともないが、よく思っていない者もいるようだ。部隊の中では主に隊長が面倒を見ていたため衝突等の問題はなし…

「英語圏の人間ということで当面は誤魔化せそうかな、」 「そうですね、主語や時には述語も抜いてしまうというのは、実際あちらの方にとっても難しいと聞きますし。慣用句の概念はとりあえず教えられるにしても、その内容までいちいち、というのは限界がある…

カチャ。 「・・・どうか、なさったんですか?」 「ん? いや、ちょっと喉がね、眠れないのかい?」 少しだけ口を押えて、脇を向いていた、言葉を選んでいるというよりはなにごとか言っていいものやら迷っているらしい。 「こんな言い方をしてすみません、身…

彼らはそもそもひどく美しい種族だと思う。それを口にするのには、実際かなりの抵抗があったのだが、“強い”というのならば誰も笑いはしないだろう。そのために地球に来る、そのために生きているのかもしれないとまで思わせる生き物だ。 そんなことをふとぽつ…

組んだ腕から冷たい顔が下界を見下ろしていて美しいなと思った。 というかあれでは明らかに尺度がおかしいわけだが、と考えてしまう自分に笑う。これは夢なのだろう、しかし「彼」は冷たく遠く、近づくことは出来そうにない。美しいと感じるのは目線の中に、…