帽子が来た、59



イオ「聞かれて、尋ねられているのはきっとそういうこと、それ自体じゃなく
 そのために“私”がどれだけ労を尽くせるか、なんじゃないかと」


マッ「エルは美しいですからね、同情くらいいくらでもされるでしょうしね」
イオ「(眉を寄せる)なあ、それはなにを指して言ってるんだ? その、」
マッ「“美しい”? 見ればわかるでしょうに」
イオ「だって」
マッ「生きて動いているものには固有の印象があるでしょう、形は平凡ですね、
 けれどだからなんだと言うのですか。エルは静止画ではないのですよ」


イオ「す、すまん、いや、妙なことを;」
マッ「だからこそ貴方がわからない、貴方にとってエルが美しくないのなら、
 なぜそんなふうに? それほど」