#10 純白のドレスは少女の夢と血に染まる(後編)

未咲女史は結局、古い友人と話をすることもままならず、彼女も彼女で自分の望みを自覚していたのかどうかも怪しく、ある意味で「裏切った」と言えなくもない彼女の護衛なのかもしれませんが、彼女が本当に彼を信じていたとすら見えず。
そして、彼女がなにを望み、どうしてそうなってしまったのか、ということを律儀にも未咲さん当人に告げるような必要もないのだから、ある意味で悪意すらないのか。
そもそも昔から娘の側にいたわけなんだしね、いつからかわかりませんが。
そして契約者となったのがどの時期なのかもわかりませんが、だって結構不定期に現れるみたいじゃない、あれ。あまり数は多くないみたいですが、つい最近であってもあんまり不思議でもない、だったら、彼女をいつ「殺そう」と思ったのかもわからない。


結局、マフィアの娘の感情一つまともに話の中で追われることもなく。
もとの友人とは口喧嘩も、裏切りをなじるような言葉すらないまま、ほとんど泡のように狂った果てに消えてしまっただけなんですが、ある意味でこういうのもありなのかなぁ、ということも思えないでもないか。
正直、全て済んでしまうと父親を殺すような必要があったようにも思えないし。
警察への道へ進まないで、と進路を始めて知った時に友人にせめてぶつけていれば、それぞれの道は変わらないながらもう少し感情の行き着く形は違ったのかもしれないとも思えないでもないですが、もと少女の中にあったのは深い、しかし一方的な諦めだけだったのか。そもそもなにが欲しかったのかすら判然としない。
案外、あんな形で殺されたのが本当に幸せだったのか、とすら思えてしまうのですが。
いくらなんでもそれは結論としてちょっと無残だよなぁ。