#8「間違いだらけの仲裁人」神坂一

人間と竜人(ギオラム)、双方にその可能性が芽生え和平が進む最終巻。
ところで作者さんも言っておられるのですが、どう考えても人間より竜人のほうにウエイトが大きいような気がするというか、当人が学者肌で兄王に疎まれ、その意思もなく人間の世界に来なくてはならなかったラーディーの元学友であるゾムドさんは。
正直こう、シリーズで一番いい男だと思います、竜人だけど。
というか、こんな形式で戦闘を語ってもしゃあないんですが、空を飛べる竜人、という大前提を元に構成される作戦ってのも結構面白かったなぁと。もともと身体が大きく力もあり、魔法が人間側よりも一般的に使われるため、接近戦でも2人から3人、空に飛び立たれると戦力差が把握しきれない、という人間側に非常に不利な状況で。


じゃあ、人間側がなにをするのかというと、使い捨ての盾を作ったり、人数を多く見せ掛けたり、というそんな創意工夫なんですよね。魔法合戦じゃないんですよ(というか、このシリーズの魔法は使い出のいい、使用者が限定される武器でしかない、転移の魔法はエリの行き来にしか使われてないし)。
まあ、そんな中で多少科学技術が進んだエリが呼び出されたところで役に立たず。
彼女が一番最初にやってきてしまったために、“新武器”の輸入の構想も潰えたんですが、それが懸命というか、バランスを崩すことだ、という地の文の言及もあったり。


和平を崩そうとするのはベツァーさんの狂気と、人間を出来損ないと軽視する竜人の「誇り」だったり、なんかこう、全体的に実は軽いものでもないのではないのかなぁと。
それにしてもこう、ゾムドさんはいい男だった(そんな結論)。