#7「嵐が丘」上、エミリー・ブロンテ

すでに作家であった姉の、稚拙な習作ではないか、とまで言われた作品で。
サマセット・モームの“世界十大小説”の一つにも数えられているという、なんというんだろう、これを小説の種類として分類するとなると純文学以外ありえないんじゃないか。父から教育を受け、都会に出たこともあり、不倫の恋に破れて故郷に戻ったのではないかとされている彼女の生涯とキャサリンが実際に似ているわけではなく。
ヒースクリフエドガ・リントンなどという、彼女に関った男たちもとても実在とは言えず、ある意味で小説的に誇張されているのかもしれなくても。それでもなんだか心の問題であるのだといえば言えなくもない。


天国は自分には相応しくない、と泣く少女は現実のものだと思うんですよ。
荒々しい、トゲのある土地でしか生きていけない、とキャサリンは泣き。


彼女の父親に子どもの頃拾われたヒースクリフと、彼女の親戚筋の美しい家のエドガと、キャサリンは一緒にいられると言ってはばからず(いやまあ、夫婦関係はエドガと結んでるわけですが)。それが適わないとなると引き裂かれると、一人の小さな女の子を残し、泣いて死んでしまうという凄まじさ。
嵐が丘”という、実際に作者の住んでいた土地に似た気候の土地も直接延々と書かれるわけでなく。そこで暮らす、本当に一瞬気を抜いたら死んでしまいかねないような荒々しい人間たちともやっぱり少し違うわけですが。
それでもやっぱり、この土地がなければ成り立たないんじゃないかと。
上手くいえないのですが、全ての人物に少しずつ滲んでいるように思うのですよ。