The Hanged Man.53



――正直、わからない。
エルの全てがもし嘘だったのだとしても(その可能性はあるわけだ)、けれど
今度はそんな嘘を付いていたのだということに胸が詰まって仕方がない。
騙すのならば、もう少し、もっと利己的な「嘘」で事足りたのではないか。
エルの悲鳴のような叫びが、意味も少しもわからないのに忘れられない。
ナイフを持つ手のたどたどしさが目に焼きついて薄れない。


 さて、もう夜も更けすぎた、子どもらには酷な夜だったろう。
 ただ私たちは、このことを一晩がすぎたら口にしないことになっている。




ノア「さあ、誰の記憶を奪うことにしようか? メビウス


【(ゼノン著)メビウスは頑張ったと思う、あの気紛れな“神”はなにもかも
記憶を消し、全てなかったことにするのがいいとも言ったそうだ。
そしてまた、同じことを繰り返すのかなんて考えもしないんだろうか。】