#2「死体が多すぎる」

とあるイングランド王が死んだ時。
すでに外国に嫁いでしまっていた娘・女帝モードと、彼女の叔父スティーブン王が争うことになった時。しかしまあ、どっちが正義でどっちが悪かはちょっと言いづらいものがあるような気もします。
そして、どちらかに付くことを迫られ、右往左往する人らの話、というか。
正にその真っ只中で起きた、けれど個人的で卑劣な犯罪の話。


感情の起伏の激しい王が、とある城を攻め落とした後。
城の主とその盟友を逃したことが判明し、その八つ当たりのようにして城の残留者94人が縛り首にされましてね、カドフェルさんのいた修道院でその死体を引き受けることになりました(城に仕えていてももとは町の人なんだね)。
したらなんか一体多い、95人いたわけですよ。
なにぶんにも一人くらいいいじゃん、と言いたくなってしまうわけですが、94人と95人じゃねぇ、、、けれどそれは一つの犯罪者を見逃したということになるのです、とカドフェルさんが説き伏せ。
王には「貴方の威光を利用して卑劣な犯罪を」と言ったもんで効きました。


消えた城の財宝に、少年の成りをした少女、草むらに追われた少年。
兄が敵方にいる美しい女性に、家族と違う道を選んだ不敵な男。
道が別れていたとしても、人間としてはどうということもないと老修道士カドフェルは言い切ります。許されざるべきことは他にあるのだとね。