愛しき戦車、25



悲鳴を上げていたのはゼノンだ、もはや喚き声に近かった。


得体の知れない緑色の液体を流すエルさん・・・よく覚えていない。
イオタ先輩はその体を抱きしめ、左腕を蜂から取り戻そうとし、引き止められて、
傷ついた体を振り払うことすら出来なくて叫んだ。


――見つけた瞬間に引き裂いておけば良かった。


そして次の瞬間、蜂は光を孕んで膨れ上がり。そしてまた記憶は途切れる。
確かに危険な存在ではあったのだ、けれど、我ら一族にとってというほどなのかと
いえば疑問が残る。他の生き物はいない、いてもノアが保護する。
凍り付く星に、「彼」は脅威だったのか、どうしてもそこが思い出せない。
なにを考えて引き裂いたのか。