#7「エッジウェア卿の死」

でもなんだかんだと、ほとんどポアロシリーズでそれまでに読んだのと比べてもかなり強烈な印象を放っているというか、その言い草のいくつかはどうかと思うこともやっぱりあるんですけれど、それでも魅力的って言ってもいいんじゃないかなぁ。
ジェーン・ウィルスキン。
ポアロさんをして、主役として彼女のために作られた舞台でならば充分に名優としていられるようなそして確かに類稀な美しさを持った、けれど私は案外、彼女の一番の魅力はそのすさまじい利己心じゃないかって気がするんですよね。
女じゃなきゃまずこんな性格にならないし、美しさも不可欠。
そして、自分や女として、自分を美しく見せること以外、男を利用して財産をなすこと以外の一切に無知、、、というより、正しく彼女が切り捨てたのだと思うのですよ。


理知的な女が幾人か出てきて。
そして彼女たちはもっと利口に、もうちょっと確実に、争いを引き起こしたりせずに物を手に入れたりもするんですが。けれど私はジェーン・ウィルスキンの、ある意味で不器用で身勝手で、まあエラいこと人の話を聞かない、他人が自分のために存在していると信じて当然だという振る舞いばかり記憶に残しています。


とある女優にポアロさんが離婚協定を頼まれ、そしてその相手が喉を掻き切られて死ぬ。
その疑われた妻は、犯行現場と離れた貴族のサロンで同時に目撃されている。
そして彼女に対して、妙な電話が掛かったというのも事実、彼女は罪を押し付けられているのか、それとも彼女の犯行であるのか。そんな話だと思います。