#29「複数の時計」

とある盲目の婦人の元にタイピストが名指しで呼び出され。
そこにはなぜか死体が転がり、午前中にはなかったはずの時計がいくつも運び込まれており(なにぶん盲目なのでいつ搬入されたかはっきりしない、証言はお手伝いさんの)、そこにたまたま通り掛った諜報部員がなぜか巻き込まれてしまいましたと。
いや、特に関わらなきゃならない必要があったわけではないんですが(通報とか一通り付き合ったのは当然としても)、どうも事件現場で会ったタイピスト嬢が好みだったかららしいんですね、その手の話の大好きなポアロさんにも、現場に来た警察の人にも揶揄られてましたよ。ちなみにお仕事柄、顔見知りだそーですよ。


で、全くわけのわからない事件ではあったのですが、少し周辺を見てみると、隣接した四軒(同じ規格の家が少しずらして背中合わせ、互い違いに並んでいる)の家の庭伝いにならば誰に見られることもなく運び込めるだろうことがだんだんわかってきて。
そもそも諜報員さんは最初に探していたスパイがそこらにいるかもしれない、ということでその家々の調査を始めるんですが、いつものごとく、皆怪しいです。
そしてその上、半分くらいがなんか実際に事情を抱えています。
クリスティさんの本はこういうことがありがちなんですが、今回はちょっとこう、珍しくそれが気にならないでもなかったです、なんでかなぁ。まあ、舞台が旅先や異国という一種の異空間ではなく、あくまで一般の建て売り住宅だったからかなぁ。
そして諜報員はその区画の全てを見ている少女に出会い(さすがに奇遇すぎる;)。
とはいえ、話の筋は納得でしたとも、しかしフツーに殺してたらバレてねぇんじゃないのかという気はしないでもない。手間掛けたら確かにそれだけ危険よね。。。